チェコ通信 Vol.4

Extra.04  小出 英夫(都市マネジメント学科)

東北工業大学同様、こちらブルノ工科大学も先週9月19日より新セメスターがスタートしました。ここのみではなく、ブルノ、そしてチェコ国内の小・中・高等学校そして大学、企業の夏休み期間が終了し、一斉にすべてが動き出した感じです。私がブルノに来た時に見ていた朝夕の交通渋滞も復活し、トラム内も学生であふれています。

ところで、今回の私の長期研修では日本に卒業研修の学生を残して来ています。今年4月に東北工業大学「長期研修制度」が見直しになり、次年度からの先生方は原則「日本で本来行うべき各種担務は一切免除、研修先での研修に専念」のようですが、私の場合、制度の変り目ということや諸事情から、卒業研修も継続しております。それを可能にしているのが、ライブ動画での打ち合わせに必須の「スカイプ」です。

 

小出研究室4年生とのスカイプでの研修指導風景 小出研伝統の「けん玉」の技術向上もライブでしっかり確認(スカイプ画面中央)

写真1 小出研究室4年生とのスカイプでの研修指導風景 小出研伝統の「けん玉」の技術向上もライブでしっかり確認(スカイプ画面中央)

 

もちろんスカイプだけでは不十分ですので、これまで一緒に研究活動等を行ってきた名誉教授や客員研究員の先生方にも多大なご協力を頂きながら進めているところです。

よく、海外での長期滞在経験のある先生方から、海外の大学の夏休み(summer vacation)について、日本とのそのスケールの違いについて耳にしていました。しかし、ここブルノ工科大学の教員の皆さんについて言えば、予想とは大きく異なり、多くの先生方が「学生が少ないこの時期こそ、自分の仕事や実験に集中できる」とのことで仕事をしていました。そのような中で、私の行っている「コンクリートの直接引張試験」の実験主体の研究と、ブルノ工科大学土木工学部に建物が隣接し常に交流がある「チェコ科学アカデミー 材料科学研究所 (Institute of Physics of Materials, The Czech Academy of Sciences,)」のSeitl准教授を中心とする数値解析主体の研究とで、「コンクリートの耐久性評価」に関する共同研究を実施しようということとなり、その過程で、日本学術振興会とチェコ共和国等の協定国とが公募している「二国間交流事業 共同研究」に申請しました。採択率は約10%のようですが、結果が楽しみです。

新学期に入ると一斉に先生方も授業等で忙しくなるため、それらの先生方の指導を受けている特に博士課程の学生(PhD student)は、この夏休み期間中に先生方と一緒に、いろいろな実験をしていました。私も何度か実験を手伝い、私自身、“ある成果”を得ることができました。

 

ロマン助教(私と同部屋)が指導するPhD studentのヤン君とその実験装置

写真2 ロマン助教(私と同部屋)が指導するPhD studentのヤン君とその実験装置

 

写真のヤン君の実験では、プラスチックチューブに水圧を作用させ、その変形を確認する実験だったのですが、変形後の状況をすべてノギスで細かく計測します。その際、常にヤン君がチェコ語で測定した寸法を読み上げ、私がそれを聞いて英語で読み上げ直し、ロマン助教が私のチェコ語のヒアリングの正誤をチェックしてくれました。これを数日間、集中して毎回3人で楽しみながらゲーム感覚でやったおかげで、それまでなかなか覚えられなかったチェコ語の数字を一気に覚えることができました。ちなみに、例えば189は、チェコ語でsto osmdesát devět (スト オスムデサット デェベット)です。

別の実験ですが、荷重を作用させた時の変位の測定を、変位計等ではなく、非接触型の3Dカメラを使用して画像解析で行っていました。かなり高価な測定装置だそうです。

 

3Dカメラシステムを使用した画像解析による変位計測の様子

写真3 3Dカメラシステムを使用した画像解析による変位計測の様子

 

ただ、少し気になったのは、実験を行っている学生達(指導教員も含め)が、測定装置のキャリブレーション(校正)は一切しないで実験をしていた点です。こちらの実験はどちらかというと数値解析結果の検証に使用するのが主目的だからなのかもしれません。それとも装置を全面的に信頼? 私のように実験を主体(得られた実験値そのものが大変重要との価値観)としている立場とは、少し感覚が違うようです。このあたりは、今後、土木工学部内の他の学科(例えば、コンクリート構造系の学科)等の実験室も訪問して様子を確認してみたいと思っています。
ちなみに、土木工学部には22の学科があり、その中に建築学科もあります。ただ、ブルノ工科大学には別途、建築学部もあるため、「建築学部」と「土木工学部建築学科」の違いにはとても興味があるところです。いろいろな人に質問はしているのですが、未だ、明確な納得した答えを得ることができていないところです。

さて、私が研修地にチェコ、Brnoを選んだ理由には、大前提として当然、現在お世話になっているNovák教授の存在がありますが、治安の良さ、親日的であることも重要なポイントでした。更に、ここBrnoには、日本の伝統芸能である「狂言」を定期的に公演しているチェコ人のセミプロフェッショナルなグループがあり、Brno以外の各地、そして京都等の海外でも公演をしており、日本のTV番組等でも何度か紹介されています。そのような日本の文化自体が上手く浸透しているBrno、そして狂言、すなわち日本人と「笑いのツボが近い」だろうという勝手な想像が、研修地決定の決め手でした。この4カ月の滞在を振り返って「間違いなかった」と確信しているところです。
その狂言の公演が先日Brno中心部で開催されたため、PhD studentのヤン君に、「すべてチェコ語だし、絶対に面白いから行こう」と口説き落とし、一緒に行ってきました。会場は毎回異なり、この日は、Brnoでも有名な建物の中庭テラスを使用しての夜の屋外公演でした。

 

狂言会場の開演前のまだ明るい時の様子(受付、会場前方のイス席、舞台)

写真4 狂言会場の開演前のまだ明るい時の様子(受付、会場前方のイス席、舞台)

 

狂言公演中の様子を舞台のかなり後方より静かに撮影

写真5 狂言公演中の様子を舞台のかなり後方より静かに撮影

 

会場一杯の100人以上の観衆でした。予想通り、公演中はチェコ人の笑い声の連続で、同行したヤン君も、「とても面白かった。次回の公演は、他の先生や学生にも声をかけて一緒に来よう!」と大満足のようでした。逆に、私の方はと言えば、チェコ語の舞台内容は?、そして実は狂言を見るのが初めてでそもそも演目のストーリーが頭に入っていなかったこともあり、「日本の文化を楽しんでいるチェコ人を見て満足している2時間」で終わってしまいました。公演終了後、ヤン君とピザを食べながら、彼から内容の説明を英語で教えてもらい、やっと笑いを得ることができるという状況でした。

まだまだ書きたいことはありますが、今回もここまでとします。
なお、最後に、前回Vol.3に続き、我々が専門とする土木技術の粋である「橋」の紹介をしたいと思います。前回紹介したスロバキアの首都ブラチスラヴァから、さらにドナウ川を下るとハンガリーに入ります。その首都ブダペスト到着の目印の一つ、ブダ地区とペスト地区を1849年につないだセーチェニー橋 通称「鎖橋(chain bridge)」です。

橋だけが土木ではありませんが、土木技術(都市マネジメント学科で学ぶ土木工学)の壮大なスケール感、そして社会に与える影響(貢献度)を感じてもらえるとうれしいです。

では。

ハンガリーの首都ブダペストの鎖橋(夜景の美しさは特に有名)

写真6 ハンガリーの首都ブダペストの鎖橋(夜景の美しさは特に有名)

 

鎖橋を構成する「鎖」の様子(現代の吊橋の「ケーブル」に相当します)     どうしても仕事柄、写真6ではなく、このような写真を多く撮影してしまいます。

写真7 鎖橋を構成する「鎖」の様子(現代の吊橋の「ケーブル」に相当します)
    どうしても仕事柄、写真6ではなく、このような写真を多く撮影してしまいます。

 

以上

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小出 英夫 教授

研究分野:廃棄物のコンクリート材料への適用に関する研究

廃コンクリートの再利用で省資源の都市整備へ
都市の構築に不可欠な材料に関する実験をしています。役目が終わったコンクリート構造物や、コンクリート塊を新たな材料として再利用する実験など、省資源・省エネルギーなどに関わる研究を行っています。

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最終更新日 2016年09月26日