そば、はじめました

VOL.030 小林 正樹(電気電子工学科)

私は長野県出身なのですが、私にとってそばといえば”信州”ではなく”山形”です。
本学に赴任する前は山形に住んでいました。山形のそば屋の充実ぶり、つまり「山形でそば屋にはずれはない」という環境を8年間堪能しました。それに対して仙台では・・・、というわけで山形産そば粉を使ってそば打ちを始めました。
つなぎの配合など試行錯誤しましたが、いまではそば粉100%、水以外添加物なしの十割そばを打ちます。十割の秘密はそば粉にあります。そば粉は最上早生という品種の石臼挽きを使いますが、十割で打てるそば粉は最初の水まわしのときの指の触感でわかります。こね鉢は普段は床の間のインテリアになっています。食卓を延し台に代用していますので、打ち粉でテーブルを粉だらけにしながら延していきます。打ち始めから約20分でそばが食卓に上ります。
新そばの時期、打ち立てのそばは淡い緑色、いわゆるウグイス色です。まずはつゆなしで、かおりと舌触り、歯ごたえを味わいます。そしておすすめは山形のトビウオだしの甘めのそばつゆです。そばの後は、打ち粉いっぱいのそば湯も楽しめます。焼酎割りもいいです。

ちなみにそばに含まれるルチンという成分は赤ワインで有名なポリフェノールの一種で、これは体にとって有害な活性酸素を消去する抗酸化作用の強い成分としても知られています。この活性酸素は小林研究室の研究テーマとも繋がっています。

さて、私たちの学科は、平成29年度から電気電子工学科に名前が変わりました。そして電気電子工学科には「医工学・バイオ系」が誕生しました。その分野に所属する小林研究室(http://www.eis.tohtech.ac.jp/study/labs/kobayashi/)の研究キーワードは、”光”、”生物”、”画像計測”、”医工学”です。
看板として掲げる研究テーマは「バイオフォトン」。バイオフォトンとは、あらゆる生物から出ている非常に弱い光のことです。私のバイオフォトン研究との関わりは30年にわたり、いまやライフワークとなっています。

ホタルの光の何十万分の一という弱い光ですが、生き物はみな光を放っています。これをバイオフォトンといいます。
太古の昔から神々は光のベールをまとっています。人類は生命の源である光に畏敬の念を抱き、光の神秘性に魅了されてきました。20世紀の科学は、生きていることがすなわち”光る”ことであるということを明らかにしました。それがバイオフォトンです。
研究が進む中でその光るメカニズムもわかってきました。生物は進化の過程でエネルギー効率の高い酸素を使った呼吸系を獲得しましたが、それと引き換えに、体の中では有害な活性酸素の発生というリスクを抱えました。これを消去する化学反応が光の発生と関係しているのです。活性酸素はあらゆる病気の原因やその進行に関わっています。加齢の原因も活性酸素による酸化劣化です。

私のバイオフォトンとの出会いは、恩師稲場文男先生の研究プロジェクトへの参加がきっかけでした。
稲場先生は当時東北大学電気通信研究所教授であり(東北大退職後は本学の教授を務められました)、そしていまのJST科学技術振興機構、当時は新技術開発事業団といいましたが、そこで今でも目玉事業としてその系譜が続くERATO創造科学技術推進事業の研究プロジェクトを率いていました。異分野融合、多国籍の研究チームで、バイオフォトンの計測技術やメカニズムの分析、医学・生命科学への応用について5年間研究を行いました。その成果は山形での生体光情報研究所につながり、バイオフォトンのみならず光と生体の相互作用を利用した生体光計測への応用をテーマとしてさらに研究を進めました。
稲場先生が本学を退職された2000年に私は本学に着任し、その後もバイオフォトンの研究を続けてきました。2013年にはバイオフォトンを生体の酸化ストレス計測に応用することを一つの研究テーマとした研究プロジェクトが、文科省の「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」に採択され、その補助のもと生体医工学研究センターが本学に整備されました(http://www.eis.tohtech.ac.jp/study/labs/kobayashi/strategic/)。

バイオフォトンは非常に弱いので計測が難しく、メカニズムの分析も難しいのですが、計測技術、検出素子の進化とともに常に新しい発見があり、まだまだこれからの可能性を秘めています。
バイオフォトンは生物が自ら出している光ですので、いわば脳波などの電気信号のような生体光信号ととらえることもできます。弱い光を光子として検出するときには必然的に量子論に基づく確率過程を伴います、つまり量子雑音の海の中から信号として意味のある情報を探さなければなりません。そんな信号を探り当てることも夢見て研究をしています。
この分野の研究者人口は多くありませんが、近年海外で若い研究者らが中心になったバイオフォトン研究の新しい動きが始まりつつあり、小林研究室もそのようなバイオフォトン研究の拠点の一つとなっています。

さて、そばの話にもどりますが、そのうち研究室にのれんを出そうかと思っていますので、その際にはぜひ一度ご賞味ください。


卒業式にて、小林研究室17回生とともに


国際交流協定校ハノイ工科大学電子情報学部生体医工学科の学生のみなさんと、集中講義にて

小林 正樹 教授

専門は生体医用光学。バイオフォトンや生体光断層画像の研究を行っています。

小林研究室

基礎生命科学に寄与する計測技術から、人に優しい医療・診断への応用を目指した技術まで、「光と生体の相互作用」に基づいた幅広い光計測技術の研究を行っています。

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最終更新日 2017年05月24日