世界の街角で仙台を想う

VOL.023 中川 朋子(情報通信工学科)

情報通信工学科の中川朋子です。専門は宇宙科学です。ハレー彗星探査機、火星探査機、地球磁気圏衛星、月周回衛星などに関わってきました。

八木山の青い空(名取方面を望む)

八木山の青い空(名取方面を望む)

 

八木山の青い空2

八木山の青い空2

 

八木山の夕焼け

八木山の夕焼け

 

宇宙科学の分野では海外に出かけて研究発表をする機会が多いです。研究者どうしのやり取りももちろん刺激的ですが、後になってみると、いろいろな国に行っていろいろなやりかたを見たことも有意義だったなと思います。

初めて訪れたのはウィーンでした。ご存じのとおり、王宮の美術館や博物館、図書館、壮大な教会、数ある音楽会など、とても美しい街です。感心したのは地下鉄でした。自転車を押した人が当たり前のように地下鉄に乗っていました。街から自転車を押したまま透明な大きなエレベータに乗り込み、ホームに降り、自然に地下鉄に乗れるのでした。

自転車がスムーズに乗れるということは、車椅子でもストレスなく乗れるということです。実際、乗車中の方も見ました。日本でもこういう風に駅を作ればいいのに、と思わずにいられません。街中でも車椅子で楽しんでいる方をたくさん見ました。お店のほうも、車椅子のかたの通行のために商品をよけたりすることをむしろ喜んでいるように見えました。

ブエノスアイレスでは、逆に、道路はでこぼこ、数メートルの深さがある工事中の穴に、柵もなくただ板が渡してあったりなかったり。そんな危なっかしい街でも、目の見えない方や歩行困難な方が、パートナーや家族と腕を組んで歩いている姿が頻繁に見られました。

確かに、誰かと一緒なら大丈夫かも。そして特別の事情のある人に特別の配慮をすることが、価値あることとして受け取られているような印象でした。

道路は穴だらけでも、ブエノスアイレスの芸術と若者は大切にされていました。コロン劇場でドンジョバンニを500円で見ることができました。国立の美術館は、学生証を持っている人は無料でした。世界中の学生証が対象ということでした。

東北工業大学の学生証を持っていると宮城県美術館の常設展が無料です。(企画展は半額です。)とても良いですが、学都仙台を名乗るなら、世界の学生証に広げられるとよいですね。

 

夏の中庭と3号館

夏の中庭と3号館

 

八木山キャンパスの昼休み

八木山キャンパスの昼休み

 

外国で地下鉄やバスに乗るときはすこし緊張します。自分で改札をするシステムの場合、改札の機械も探さないといけません。先のウィーンでは、会議の会期中、市内の全交通機関フリーパスという「コングレスパス」が配布され、それさえ持っていれば安心してどこにでも行くことができました。ワルシャワでは、そんなフリーパスの券すらなく、会議の名前とコペルニクスのイラストが印刷されているバッグを持っていれば市内のバスはどれに乗っても無料なのでした。ブレーメンでは会議の名札をつけていれば無料でした。

ウィーンのコングレスパス

ウィーンのコングレスパス

 

ブレーメンのトラム

ブレーメンのトラム

 

ブレーメンのトラムの車内

ブレーメンのトラムの車内

 

パリだったかピサだったか、「ここから先は一般の方には公開していないのだけれど、その名札をみるとサイエンスの会議の参加者だから、見学させてあげます」と言われたこともありました。パスポートを忘れて、会議の名札の信用で両替してもらったこともあります。日本以外の国では「サイエンスの会議の参加者」に対する信用がとても高いようです。

ワルシャワでは公園の多さにも驚きました。勾当台公園のような小さい公園ではなく、森がそのまま市内に出現したような大きな公園。しかもいくつも。ご老人にリスが駆け寄り、手から木の実をもらっていました。ワルシャワが森の都なんて聞いたことはなかったのに。仙台は杜の都といいますが、杜はどこ?

最近、日本のおもてなしが優れている、というような記事や報道を見かけるようになりましたが、あまり重要でないことの自画自賛になっている場合もあるように感じます。交通機関の切符を買う、乗る、両替をするなどの基本的なことが、日本語を読めない方でもできるようになっているのか心もとないです。スイス連邦鉄道の切符の買いやすさ、時刻表ダウンロードのしやすさは日本の鉄道もぜひ見習っていただきたいです。外貨はどこで両替したらよいか、仙台に着いてすぐわかるでしょうか。ENTRANCEと書いた窓口を仙台駅で見たことがありますが、何の窓口かわからないのにそこだけ英語なのが謎でした。日本語が読めない方の視点で仙台を見直す、というような面から、本学も貢献できると良いですね。

 

初夏の八木山キャンパス

初夏の八木山キャンパス

 

図書館から研究室に向かう木陰

図書館から研究室に向かう木陰

 

そしてシステムがしっかりしているところでも、そうでないところでも、人の親切に助けていただいたことがたくさんありました。日本では暗黙の決まりごとが多いことにも気づきました。ひとりだけ違うのはだめ、こういう服でないとだめ、夕食はお母さんが手作りしないとだめ、など暗黙のプレッシャーが多いように思います。一度日本の外に出てみると、そんなことどっちだってよかったんだ、いろんなやりかたがあっていいんだ、と許容範囲が広がるかもしれません。

 

イスタンブールの青い空

イスタンブールの青い空

 

中川 朋子 教授

専門:太陽系プラズマ物理学、宇宙空間電磁気学。
理学部天文及び地球物理学科第二卒、大学院は地球物理学専攻。太陽系空間程度の近所の宇宙や惑星科学は地球物理の領分です。研究には情報と通信が不可欠です。

中川研究室(3年生を迎えて)

9月に新3年生9名が加わり現在17名、地磁気変動の観測データや衛星観測データの解析などを行っています。

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最終更新日 2016年10月27日